夢幻的プラネタリウム

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「仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐 / 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン」

 

王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン

シュゴッタム国王が即位する際に扉が開く死の国ハーカバーカが舞台。ギラのみならず五王国の王たちの、王となる覚悟を問われるような物語。この映画を見なくとも本編は楽しめるだろうけれど、この映画を見ることでその覚悟を知ることができる仕様。そしてギラが王となるための儀式をこなしていくことで、ラクレス様の凄みが伝わる仕様にもなっている。

「生きている限り、人には明るい未来がある」と語るライニオールに対しギラが「生きることは地獄だ」と切り出すの、すごいシーンだった。「未来、幸せ。それを当たり前に手にできるのは、あなたのような強い人だけだ。理不尽は容赦なく襲いかかってくる。痛みと悲しみを背負わされる。その地獄を作ったのは、始まりの王、他でもないあなただ」「生かすために犠牲を強いる、あなたがそれを繰り返すなら、僕が2000年の歴史ごとぶっ壊してやる」声を荒らげることはないのに、静かで確かな激情が伝わってくるこの口上、本当にすごかった。ギラの言葉を聞くデボニカの表情がしっかりと映されるのがこの後に生きているのもすごい。「地獄みたいな世界で、小さくても幸せを見出す。だから僕たちは生きていけるんだ!小さな幸せこそ守る。そんな王様に、俺様はなる」「民があっての王!誰が王かは民が決める!選べデボニカ。始祖の王か、邪悪の共にと地獄を生きるか!」で変身をして、ライニオールと対峙したタイミングで流れるのがギラのキャラソンである「INFERNO」なの、映画館の椅子に張りつきながら見たもん。ずっとクライマックス。デボニカが「我が王!」の言葉とともに投げた王冠がギラの手元に辿り着くのも、ライニオールの「王を裏切るのか」という言葉にデボニカが「私は生きたい!ケーキ食べたい!私の王はギラだ!」と返すのも、泣きながら見た。

死者の国でそれぞれの王が死者に合っている最中、ただひとり死の国から出るための扉を探しているヤンマにはここで会う死者がいないんだという事実。そこにやかましくやってきて扉を閉じるシオカラの存在が救いだし、シオカラ、ずっとヤンマくんのそばにいてくれよな……と思った。残り10分ではじめて変身するし、残り5分で変身姿で全員が揃う映画なのに、全員揃ってからの意思の統一のレベルが高すぎてそうとは感じさせない。2000年の歴史と英雄の責務を背負えるかとライニオール問われた王様戦隊がまったく同じ間合いで「知るか!」「知りません!」と返すの、大好きだった。そしてそれにギラが「俺様は、邪悪の王!歴史を嘲笑い、英雄を足蹴にし、悪しき道こそ行く!そこをどけ!」と返すのも。結局最後は「その道の先で必ず民を救え」「約束する。新たな歴史を担う王として」で終わるの、ライニオールも悪いやつではないんだよな、やり方が違うだけでさ、みたいな気持ちになるからうまい落としどころだと思う。

ギラの戴冠式に入るジェラミーの「暗雲は晴れず、この先に何があるかは知れず。それでも進むしかないのだ。彼の信じる王道を」という騙りを聞きながら、ライニオールによって残された「君が王になった今年、人類が滅亡する大災厄が間違いなく訪れる」という予言の不穏さを思い浮かべていた。「君は優しい。しかし、戦乱の世において、優しさは人を救えない」というギラの表裏一体の強みと弱みも。そうやってぼんやり考えていたけれど、ケーキを食べるデボニカの「ん~~幸せ~~!」で終わるの、本当に本当にいい映画だな!に感想をシフトさせるから最高。劇中の「あんな甘ったるいケーキ」発言で文脈が見えるのも良すぎたし、デボニカの描写と表現の繊細さがめちゃめちゃ生きていてとてもよかった。

上映時間が33分しかないとは思えないボリューム感と満足感の映画だった。もしかしたら死者の国は時間の進みが遅いのかもしれない。

仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐

正直キングオージャーの余韻に浸っていてあんまり記憶がないんですけど、ジーンの「おめでとう、君たちも今日からオーディエンスだね」の言葉で、映画を見に映画館にいるはずなのにいきなり勝手にデザイアグランプリのオーディエンスにされた驚きは鮮明。正体不明のジャマト世界樹が出現した世界に登場するギーツの「化けて出てきてやったぜ」「よく言うだろ、大物は後から現れるって」「開幕からハイライトだ!」という台詞たち、昨年の夏映画に出てきた、よくわからんことばかり言い続けるギーツっぽさがあって懐かしくなった。

複数の世界線に、それぞれの要素だけを抜き出して他の要素が薄まったギーツが存在するという状態。力、知恵、運、その残りに分裂している上に時代とシチュエーションが異なる。本編でどんどん完璧超人みたいになっているギーツ、分裂するとこんな愉快になるんだ……みたいな気持ちで見た。個人的にはウエスタン道長と一緒にいる熱血あほの子みたいなギーツが愉快で好きだった。ベルトぶん投げて道長のアシストでようやく変身できるギーツ。無人島のラッキーハッピーギーツは、我那覇冴様の登場がかっこよすぎてそれにぜんぶ持っていかれた感ある。ストーリーはそこまでって感じだったけれど、アクションシーンの満足度はだいぶ高かった!ソファを受け止めて座って足組んでから攻撃に転じる英寿、めちゃめちゃよかったしあそこだけ何度でも見たいよ。メロにドロップキック決めて「っしゃあ!」とガッツポーズしているツムリも本当に本当にかわいかった。

スクリーンの中から「さあ!みんなも一緒に応援だ!」と促されるメタ映画、方向性がどちらかというとヒーローショー。「みんなが願う限り、世界は変えられる」「平和な未来を作れるよきっと」「みんな忘れろ!こんな世界のことは忘れるに限る!」と言い合い、「仮面ライダーは我々の世界を守っている」というルールを出してなんかいい感じにふんわり終わったけれど、これってどの時代の話なんだろう。これがテレビシリーズ最終話以降の話だとすると、テレビシリーズどう終わるのかで受ける印象はだいぶ変わる気がする。