夢幻的プラネタリウム

visionary planetarium

「THE FIRST SLAM DUNK」


特報が良すぎたので見たいなと思いつつ先送りにしていた映画。学生500円のキャンペーンに伴い上映回数が少し増えたタイミングでようやく見に行きました。見終わってすぐは、いい試合を見た!という爽快感が強くて、後からじわじわといい映画だったなと染み渡ってくる映画だった。スラダンはだいぶ前にアニメを見た記憶はぼんやりあるけれどそこまでしっかりとは覚えていなかったので、見ながらだんだん記憶を取り戻した。

何度でも見たい最高ポイントは「LOVE ROCKETS」をBGMにしたオープニング映像です。クローズはじまるんか?ってくらいゴリっとした曲と共に湘北のスタメン一人一人に命が吹き込まれる瞬間を見せつけられるの、最高じゃん。湘北が揃ったあとに山王が階段を降りてくる強さの演出も素晴らしい。王者が上から降りてくる構図。同じ画面に同時に存在しない湘北と山王が相対した直後、画面が鮮やかに色づいて試合が始まるの、最高すぎて何回でも見たい。

宮城を主軸に展開していく物語でありながら、終盤、桜木花道の怒涛の主人公ムーブに圧倒された。どこにいても主人公にしかなりえないタイプの人間っているよね。「オヤジの栄光時代はいつだよ。全日本のときか?俺は」「俺は今なんだよ」にめっっっちゃめちゃ主人公を感じた。無音の逆転からはじまり、遠くなる音の中に響く鼓動の低音、集束していく音、永遠と一瞬が同時に存在するような時間の流れとカウント、無音、ゲームセット、響くハイタッチの音、流れ込む会場の音。この圧巻の流れ。身じろぎひとつ瞬きひとつ許されないような静寂の中に身を置きながら、映画体験だ、と思った。

野球やバスケを見ているときの、場の空気が試合の流れを支配するあの感覚が妙にリアルで、湘北に思い入れが生まれるように描かれている物語を見ながらも、心の端で山王踏ん張れ!負けんな!という気持ちになる。湘北に勝ってほしい気持ちと山王に負けてほしくない気持ちのせめぎ合いですよ。山王、インハイ常連常勝校で広島で開催される試合に秋田からあれだけの応援団を連れてくるような高校だよ。OBからの期待も寄付金もえげつないだろうし、勝って当然負けるなんて許されないみたいな状態であの場にいるのに、バスケはじめて4か月の選手がスタメン張ってる無名校相手に初戦敗退なんてなったらもうどんな顔して帰ればいいわけ?って感じじゃん。辛い。「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる」という言葉で「俺に必要な経験をください」の答えが敗北なのだと突きつけられるシーン、辛くて泣きそうだったもん。長い目で見ればきっとその通りだしその通りだからこそその後があるのだろうけれど、自分が望んだから負けたのかもしれないと思わされるのはあまりにも惨い。そう思ってしまうこと自体に、敗北が必要な意味が詰まっているというのも含めて。

一時期Bリーグを会場で見るのにはまっていたけれど、観客として会場でバスケを見るのとはまた少し違った感覚の観戦だった。よりプレイヤーに近いというか。会場で見ていたらあんなコート内でお互いに煽っているのなんか聞こえないからね。逆転ドラマを期待する無責任な観客の立場にいるようで、コートの内側に立つ感覚も体感できる。おもしろい映画だった。また久しぶりに会場でバスケ見たいな。